国立大学法人筑波大学生命環境系 江面浩教授(つくば機能植物イノベーション研究センター長)と国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 高度解析センター 矢野 亮一上級研究員(筑波大学生命環境系 クロスアポイント助教)らは、我が国の高級マスクメロン標準品種「アールスフェボリット春系3号」について、全ゲノム情報を解読し、データベース化しました。
一般に、高等植物ゲノムには反復配列が多く含まれており、そのような領域を解読できない場合は、未決定領域(ギャップ)としてデータに残存します。しかし今回、長鎖のDNAシークエンスが可能なOxford Nanopore Technologyとゲノム構造データを組み合わせることにより、日本産高級マスクメロン「アールスフェボリット春系3号」のゲノム染色体配列(全長378 Mb)を、わずか94個のギャップで高精度に解読することに成功しました。加えて、ゲノム配列上に存在する33,829個の遺伝子を特定し、組織別遺伝子発現マップと合わせて、データベースサイト「Melonet-DB」(https://melonet-db.dna.affrc.go.jp/)にて情報公開しました。さらに、ゲノム内をジャンプして移動しうるモバイル配列(レトロトランスポゾン)にも注目し、レトロトランスポゾンがメロン品種間のゲノムの多様性を生み出す原動力となった可能性を提唱しました。本研究で解読したゲノム情報は、今後、遺伝子機能の基本的な理解のみならず、高級マスクメロンの品種改良に役立てられることが期待されます。